UP 2015.8.4 kita
伊吹山・旧中山道醒井宿


集合、出発~山頂

 集合場所の大阪駅前第四ビル前にはシニア自然大学校の他の研究科のバスツアー参加者も集まっていて久しぶりに会う顔なじみの人との交歓を楽しむ朝となった。今日は全国的に猛暑日になるとの予報のなかで元気なシニアが集まった。
 8時00分出発し名神高速道路が途中で渋滞し、ドライブウエイの森林の中を走り、伊吹山山頂駐車場には少し遅れて到着した。見上げる山頂まではあと117mあり、山頂で昼食予定であったが、登山散策前に駐車場で昼食をとることにした。ドライブウエイの料金所の山頂予想気温は21℃と表示されていたとおり涼しい。バス車内、屋外で昼食をとる人と様々であったが、いずれも涼しいなかでの昼食となった。


スカイテラス駐車場

昼食

 12時10分展望台に再集合し、集合写真を撮った。登山道は人で数珠つなぎだ。しかし予想していたより駐車場のバスは少ないとのことだ。今日の天気予報の猛暑で外出を控えた人が多いのだろうか。環境科の出席者も21人と少ない。

集合写真


西登山コース前にて

 いよいよ登山開始。3ルートのうちの西登山道コースを選び、約40分の散策登山だ。伊吹山お花畑ガイドを手に、花を見つけるたびに歩は止まり、なかなか進まない。コオニユリ、カワラナデシコ、イブキフウロ、シモツケソウなどの夏の高山植物が真っ盛りだ。青・紫色、白色、黄色、赤・ピンク色、茶色の花が咲き誇っている。


西登山コース出発

コオニユリ

カワラナデシコ

イブキフウロ

シモツケソウ

西登山道で観察中
 

  メモをとる花の名前や汗どつと   浅田  


 途中にわかに霧に包まれ、伊吹山特有の気象を体験できた。寒候期には、若狭湾からの北西気流が、また暖候期には伊勢湾から南東気流が流入する通路に位置するために、伊吹山の山頂付近はいつも雲におおわれやすく、年間を通じて湿度が高いという。年平均相対湿度は、88%で、7月に94%、8月には93%に達し、12月や1月でも90%を維持しているそうだ。湿度の高さが霧となり、涼風が心地よい。
 駐車場から山頂まではお花畑の草原で、樹木はない。森林限界の様相を呈している。緯度と標高からすると森林限界とは考えにくいが山頂の年平均最高気温は9.3℃、年平均最低気温は3.7℃で年平均気温は6.1℃の亜寒帯性湿潤気候で冬の降雪も多い。そういうことで山頂付近は草地となり樹木はないが、全山で1,700種以上の植物が分布し、貴重な自然の宝庫だ。「伊吹山固有種」も多いという。日本百名山であり花の百名山の一つでもある。多雨、多雪、湿潤が多様な植物を生みだしたのだろう。しかし近年鹿の食害によりお花畑が荒らされているという。そして多雨、多雪は石灰岩層を浸透して麓の名水を生んでいる。昭和2年に山頂で11.82mの積雪を観測した。これは世界記録である。ゴールデンウイーク頃でも駐車場に雪が残っているという。
 山頂の草地の所々に石灰岩が露頭し、カルスト台地の景観がみられた。2.5億年前に伊吹山は海底火山だったそうだ。山頂にはその証拠であるウミユリの化石が置いてあった。ウミユリは植物ではなく、深海に生息するヒトデやウニの仲間だそうだ。地層はその時期にサンゴ礁が出来たため良質の石灰岩が産出される山でもある。プレート・テクトニクスにより海底火山が、フィリピン海プレートの沈み込みと隆起により出来た伊吹山に地球の歴史と日本列島の成り立ちに思いを馳せた。


石灰岩が露頭したカルスト台地

ウミユリ化石

伊吹山寺本堂

 標高1377mの山頂には伊吹山寺の本堂があり、かつて修験道の霊峰であったことがうかがわれる。近畿五芒星のパワースポットとしてその霊験を求めて参拝する人も多いという。本堂では色々の「魔除け」のお守りが授けられている。 豆(魔滅)のお守りを記念に購入した。人数確認後日本武尊の像の前で集合写真をとり、下山の準備に入った。

集合写真


山頂の日本武尊の像の前で

  雲の峰武尊の像の前で撮り   浅田  


 13時10分東登山道(下り専用)より下山開始。石灰岩が道に露出してつまずきやすい道だ。「登山装備を確実に!」という注意看板があり、足元注意で慎重に下山した。予定時刻の14時00分に駐車場で待機していたバスに全員無事到着した。


保護柵の中のシモツケソウ

石灰岩露頭の登山道

東登山道を下る

次の観察場所へ

 次の目的地である道の駅に向かったが、あいにく駐車場が満車で、車窓から伊吹山の石灰岩採石場を確認した。
 最終は旧中山道醒井宿にある居醒の水として有名な地蔵川の梅花藻の観察だ。今年は梅雨の多雨で梅花藻はほとんどが水中だが、一部に水面から花が出ている箇所もあるそうだがなかなか見つからない。観察用に用意されたプランターから水面に出た花を観察することが出来た。
 水の透明度は高く水中の花も良く見えた。9月頃まで見頃が続くという。湧水場所で柄杓が用意されていたので、名水を味わった。水温15℃でとてもおいしかった。日本武尊が伊吹山の大蛇の毒気にあたり高熱に苦しんだが、この居醒の水を飲んで蘇生したという説明板があった。 またこの地蔵川には絶滅危惧種の淡水魚「ハリヨ」が棲息している。ハリヨは年間の水量が一定した綺麗な湧水地や、その周辺の流れの緩やかな河川に限定して生息し、水草の生い茂った水深20-50cmの浅瀬に生息する。清浄な湧水のあることは生息環境の必須条件で、10-18℃の低水温を好み、水温20℃を超える場所では生息できない。資料館の水槽でハリヨを観察・確認した。 醒井宿は宿場町の雰囲気を残し、本陣跡やヴォ―リス設計の旧醒井郵便局局舎などの古い建物が残っている。帰路了徳寺の天然記念物オハツキイチョウの木の説明を村瀬さんから受けたが、残念ながら葉についた実は確認できなかった。

地蔵川の清流

清流のバイカモ

居醒の水を汲む

ハリヨ

木造のヴォーリス設計の旧郵便局

了徳寺のオハツキイチョウの木

大阪帰着

 JR醒井宿駅駐車場に待機していたバスに予定通り集合し、16時大阪をめざしバスは出発した。途中少し渋滞があり予定より30分遅れて梅田桜橋のガード下に無事到着した。

観察できた植物など


アカソ(イラクサ科)

イブキジャコウソウ(シソ科)

イブキトラノオ(タデ科)

イブキフウロ(フウロソウ科)

ウツボグサ(シソ科)

ウバユリ(ユリ科)

オオバギボウシ(ユリ科)

オトギリソウ(オトギリソウ科)

カワラナデシコ(ナデシコ科)

キオン(キク科)

キヌタソウ(アカネ科)

キリンソウ(ベンケイソウ科)

キンバイソウ(キンポウゲ科)

クガイソウ(ゴマノハグサ科)

コオニユリ(ユリ科)

サラシナショウマ(キンポウゲ科)

シモツケソウ(バラ科)

ダイコンソウ(バラ科)

トリカブト群落(キンポウゲ科)

ノリウツギ(ユキノシタ科)

ハクサンフウロ(フウロソウ科)

ヒメフウロ(フウロソウ科)

ミヤマコアザミ(キク科)

メタカラコウ(キク科)

ヤマアジサイ(ユキノシタ科)

ヤマホタルブクロ(キキョウ科)

トモエシオガマ(ゴマノハグサ科)

ワレモコウ(バラ科)

キアゲハ(アゲハチョウ科)

ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)

寄せられた感想

◇5年前の誕生日(8月8日)に”二人で登ろうね!”と某女性(30歳代)と約束をしながら、自分の都合でキャンセルしてしまってた想い出の山です。上京(月に1~2回)の度に新幹線の中から想いを馳せていた山です。今回の登山の報告を楽しみにしています。

◇6年前に比べてシモツケやイブキトラノオの群落がほとんどなくなってしまった。鹿の食害とはいえ保護柵の中でしか咲けない花達が哀れである。植物観察というよりも環境問題を見る旅であった。

◇山肌にさく美しい花と山の冷たい風でたいへん気持ちがよかったです。ただ、以前と比べて鹿の被害で花の数が少なくなっているのは残念でした。伊吹山、醒ヶ井とも村瀬さんの丁寧な案内と2班の担当の皆さん、ありがとうございました。

企画担当の感想

 暑さが心配されたが、冷房の効いたバスでの移動と伊吹山山頂の涼しさ、醒井宿の地蔵川の水の清涼さで爽やかな一日を過ごすことが出来た。幹事二人は初めての場所で皆さんに充分な案内は出来なかったが、案内者、説明者が沢山いて、環境科の人材の豊富さを改めて実感し、感謝の一日であった。



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