UP 2014.12.16 HRY
シニア自然大学校環境科 2014年12月度野外活動
有馬温泉 泉源を巡る
■日時:平成26年12月12日(金) 10:45〜14:30 天気 曇
■行先:有馬温泉(神戸市北区)
■集合:10:45 有馬温泉 太閤橋
■目的:有馬温泉の地質と温泉の湧出構造について学ぶ
■案内:シニア自然大学校地質クラブ
■参加者:環境科 34名
行程
午前:10:50太閤橋→ねね橋→金の湯→温泉寺→湯泉神社→11:20太閤の湯殿館(入館・見学)→11:35有馬の工房(地質クラブ合流・講義・昼食)
午後:13:00有馬の工房→@御所泉源→A極楽泉源→銀の湯→B炭酸泉源→C妬(うわなり)泉源→D有明泉源→E天神泉源(集合写真)→14:20金の湯前(解散)

ルート図
『有馬温泉は道後、白浜と並ぶ日本三古湯の一つで古くから温泉保養地として発展してきました。奈良時代に僧「行基」が温泉を開きましが、三方を山に囲まれた有馬は山崩れ、地震、大火などの被害に遭い、鎌倉時代に吉野の僧「仁西」が再興、「太閤秀吉」の手厚い保護で、江戸時代には有馬千軒といわれるほど繁栄しました。この3人を有馬温泉の3大恩人と言っています。現在は国際観光地として賑わっています。本日は有馬の歴史と共に、何故ここに温泉が湧くのか地質や温泉の湧出構造を学びながら6つの泉源を巡ります』
有馬の歴史探訪(午前)
有馬の地形
有馬温泉は六甲山北東の標高350m〜420mにあり、瑞宝寺谷を流下する六甲川、紅葉谷を流下する滝川が合流し有馬川(武庫川の支流)となる三角形の傾斜地帯に温泉と温泉街があります。有馬高槻構造線の西端に位置し、地層は六甲花崗岩、有馬層群流紋岩質から成り立っています。100万年前の六甲変動で約1000mも隆起したために多くの破砕帯や断層が走り、断層の隙間から温泉が湧出すると考えられているようです。今夏の記録的豪雨で被災し、ハイキングコースの紅葉谷はいまだに不通となっています。

有馬温泉は六甲川(左)と滝川に囲まれた傾斜地に立地する

太閤橋東詰でスタートミーティング

金の湯
温泉寺
有馬温泉を訪れた僧行基が神亀元年(724)に建立。黄檗宗、本尊は薬師如来と十二神将像。3大恩人の行基と仁西の木像が祀られる。毎年1月2日の入初式の際に木像に初湯をかけて沐浴する。
湯泉神社
有馬の守護神。有馬温泉を最初に発見したと言われる大己貴命(おおなむちのみこと=大国主命)、少彦名命(すくなひこなのみこと)、熊野久須美命(くまのくすみのみこと)と発見を導いた「三羽がらす」が祀られています。

行基建立の温泉寺

有馬の守護神を祀る湯泉神社
極楽寺と太閤の湯殿館
極楽寺は593年に聖徳太子によって創建された浄土宗のお寺、本尊は阿弥陀如来坐像。
阪神・淡路大震災で被害を受けた建物の修理中に、伝説であった秀吉の「湯山御殿」の遺構が発見され、現在は「太閤の湯殿館」として公開されています。

太閤の湯殿館入館

蒸し風呂、岩風呂を再現
泉源めぐり(午後)
有馬の工房(多目的ホール)で地質クラブ上杉講師による方位磁石の使い方、有馬の地質についての講義を受ける。磁石の説明では山歩きなどに慣れない環境科員にはもう一つ理解が出来ず、再度説明してもらって納得。要するに「磁石の文字盤の南を体の正面において、磁石のN針の示す方位を読めば自分の向いている方向がわかる。ただし東西を反対に読むこと」。地質調査や道に迷った時に役立つ。
有馬付近は太平洋プレートとフィリピン海プレートの接する位置にあり、それぞれの押しによって日本列島が中央部から北へ折れ曲がった約1450万年前の地質年代のものであり、六甲花崗岩と流紋岩類からなる有馬層群の接触部分の断層の水道を通じて温泉が湧出すると考えられている。泉源は北西から南東に走る断層に沿って存在し、それぞれが別の断層のようです。詳しくは配付資料(上杉講師)を参照下さい。
*筆者注
有馬温泉と六甲山周辺には火山がなく、有馬で高温の含鉄強食塩泉が噴出するのは長年謎とされてきました。近年、水質の分析により南海トラフへもぐりこんでいるフィリピン海プレートのマントル付近を源とする温泉であることがわかりました。その深さは地下40q〜80qにも及ぶと言われています。一般的な温泉は地表近くの地下水が火山活動によって温められたもので深さは数kmです。また、海水の1.5倍から2倍の塩分を多く含むことから、太平洋の海水がフィリピン海プレートに取り込まれ、それが有馬にわき出していると考えられています。プレートに閉じ込められた太平洋の海水。数百万年前の海水が、有馬温泉の湯となって湧き出し、人々の体を温め、心を癒しているのです。

地質クラブ上杉講師の講義(有馬の工房で)

方位磁石の使い方

白亜期西南日本の復元図(配付資料より)

1450万年前の日本列島(配付資料より)
昼食後、2班に分かれて地質クラブ(上杉講師、軸屋さん)の案内で6つの泉源を巡ります(トップのルート図参照)。有明泉源以外は神戸市が管理、公開しています。炭酸泉源を除き、いわゆる金泉(含鉄ナトリウム塩化物強塩高温泉)と呼ばれるものです。炭酸泉源は唯一炭酸冷泉で有馬サイダーや炭酸煎餅づくりに使われています。ほかにホテル等が所有する泉源もあります。

妬(うわなり)泉源ではたまたま泉源管理業者が作業中で、貴重なお話を聞くことができました。驚いたことは、直径5cmほどのパイプに白いスケール(酸化鉄や炭酸カルシウム等の厚い金属酸化物)が付いて詰まってしまい、7日に1回パイプの交換が必要なのだそうです。すべての泉源を考えると毎日どこかの泉源のパイプを交換していることになります。温泉を維持するのは大変なことです。

各泉源のデータをまとめてみました。(出典:有馬温泉観光協会 泉源調査報告書S58年2月発行ほか)

泉源名 泉質 泉温 PH 湧出量 深さ 掘削年 給湯先(ホテル・旅館等)
1.御所 金泉 83.5℃ 6.34 24L/分 182m S26年 4ヶ所
2.極楽 金泉 94.3 6.37 6.9 223 S28 11ヶ所(車での配送あり)
3.炭酸 銀泉 18.6 4.66 - 13 M6 -
4.妬 金泉 93.8 6.37 28 185 S30 御所泉源タンクへ,20ヶ所
5.有明第1 金泉 90.1 6.11 - 277 S17 休止中
 有明第2 金泉 90.1 6.21 - 272 S30 5ヶ所
6.天神 金泉 98.2 5.89 28 206 S23 金の湯等5ヶ所

金泉:含鉄ナトリウム塩化物強塩高温泉、銀泉:単純二酸化炭素冷鉱泉


御所泉源

極楽泉源(秀吉の湯殿へ金泉を送っていた)

炭酸泉源公園

炭酸泉源井戸(冷鉱泉)

炭酸泉源直下の炭酸せんべい工場を見学

妬泉源(間欠泉:美人が通ると妬いて吹き出す)

泉源管理業者のお話を聞く

スケールで詰まったパイプ(7日で交換)

有明第一泉源(休止中) 神戸電鉄管理

天神泉源(湧出量最大、 金の湯へ給湯)
天神泉源で集合写真を撮影後、金の湯前で解散。以降自由行動としました。折角の温泉なので入浴しようと思いましが、寒波襲来で風邪を引きそう。約1名が入浴しましたが多くの人は足湯で我慢。

風情のある湯本坂

金の湯の足湯で

天神泉源で
 
本日は有馬温泉の地質と温泉の湧出構造について学ぶということでしたが、如何だったでしょうか。講義時間が不足して十分理解が得られないままに終わってしまったと思います。講義はやはり教室で落ち着いて聞かなければならないと反省しています。地質クラブの皆さん遠路はるばるご出張・ご案内いただきありがとうございました。

冬近し泉源めぐり坂の町     良徳

文/平山、写真/大野・北仲、編集/平山
企画・世話役/3班 平山、加藤

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