シニア自然大学校環境科 2010年5月度野外活動
能勢 三草山と長谷棚田を歩く
up 2010.5.24 HRY
・日時:2010.5.21(金) 晴れ
・集合:川西能勢口駅 9:20
・交通:阪急路線臨時バス 9:30発
・行先:能勢 三草山・長谷棚田
・ガイド:能勢町観光ガイドの会 6名
・参加者:環境科 40名
◇ルート◇
Aコース:川西能勢口09:30〜(阪急バス)〜道の駅能勢くりの郷10:20〜慈眼寺(11:00〜11:30)〜ゼフィルスの森〜三草山(12:30昼食13:00)〜才ノ神峠13:20〜長谷棚田13:40〜長谷公民館(14:30〜15:00)〜(阪急バス)〜川西能勢口15:40

Bコース:慈眼寺までAコースに同じ。 慈眼寺(11:30〜昼食〜1300)〜岩坪古墳〜長谷棚田13:40→ Aコースに合流
RouteMapはこちら
大阪最北の地、能勢町。緑の山並み、谷間に広がる田園、山の斜面に開かれた棚田、茅葺屋根民家・・・。ここには、忘れかけていた日本の原風景が残っています。現地ボランティアガイドの案内で、三草山とその山麓に広がる棚田を歩き、能勢の自然と歴史に触れるとともに、その環境保全について学びました。特に日本棚田百選に選定された長谷棚田ではオーナーから棚田独特の灌漑方法などをお聞きしました。

1.道の駅〜慈眼(じげん)寺

道の駅能勢(くりの郷)で能勢町観光ガイドの会、川合さんほか5名の皆さんのお出迎えを受ける。棚田のオーナーさんもご一緒である。朝方どんよりしていた空も、出発の頃には晴れ上がり、真夏を思わせる天気になる。新緑の山々、田植えを終えたばかりの水田、こいのぼりの上がる茅葺民家を遠く眺めながら、4班編成で三草山山麓の慈眼寺へ向けて歩く。炎天下、熱中症が心配で水分補給を心がける。万一に備えて、ガイドさんの車が一行に伴走する。そこまでしなくとも・・・とは思ったが、やはり車のお世話になる人がでてしまった。

道の駅能勢くりの郷にて

こいのぼりのあがる能勢路

一行に伴走する車
岩坪古墳は時間の関係でパス、歩30分で慈眼寺へ。大きなカヤの樹がシンボルだ。住職さんの三草山の自然と歴史についてのお話を聞く。火山活動でできた三草山は、山中に大きな空洞ができていて伏流水が豊富なため、広い棚田が成り立っており、水争いはない。山名の由来は、百済の高僧日羅が登拝したところ、三つの草を手にした老翁に遭遇。三草はたちまち「観音・不動・毘沙門」の三仏に化身したため、そこに三草山清山寺を開いたという。境内観音堂の傍らにある花崗岩の宝篋印塔は、文和三年(1354)の銘があり、三草山山上にあった旧清山寺から移されたと伝えられている。墓碑名に「竹本太夫」が多いのは浄瑠璃が能勢の伝統芸能であることを物語っているのだろう。

放光山慈眼寺

住職 三草山の自然と歴史を語る

岩坪古墳(Bコース)

2.ゼフィルスの森〜三草山

ここでAコース三草山登山組み3班と、Bコース山麓散策組1班に分かれる。Bコースは5名で川合ガイドが引率し、住職さんのお話と岩坪古墳を巡る。
以下はAコースの記録です。
お寺の裏手に廻ると、はるか三草山がなだらかな丸い姿を見せる。標高差300mだが、炎天下だけに難行が予想される。棚田に沿った道は、やがて「ゼフィルスの森」に入る。
ゼフィルスの森では、日本に生息するミドリシジミ類の蝶(ゼフィルスという愛称でよばれる小型の蝶)が生息し、なかでもヒロオビミドリシジミは大阪府内でここにしか生息しておらず、日本の分布の東限にもなっているという。この貴重な三草山の環境を残すため、「大阪みどりのトラスト協会」が、保護活動を行っている。
手入れの行き届いた里山には、クヌギやアベマキ、コナラが多いが蝶の食草とするナラガシワとはどの樹なのだろうか?黄色のプラスチックケースで保護された幼木はアオダモとのこと。ふかふかの山道は体に優しかったものの、最後の階段の登りはきつく、体力の限界を感じた人もあったようだ。

慈眼寺から三草山を望む

ゼフィルスの森入口

山頂まで結構きつい登りが続く

なだらかな三草山頂上、大阪湾は霧に霞む

三草山頂上で集合写真
三草山は標高564m、なだらかな頂である。木漏れ日の下で昼食、一汗かいた体に涼風が心地よい。大阪湾や北摂の山々は遠く霧にかすむ。ガイドさんから三草山の歴史を聞き、才ノ神峠に向かって下る。
3.才ノ神峠
才ノ神峠は、多田銀山や有馬、池田等に通じる古くからの峠で、平安時代からすでにこの辺りの杉材等がここを通って運び出された。交通の要衝で、見れば南北8叉路となっている。道標に寛文11年(1671年)の文字が読める。

才ノ神峠の地蔵さんと道標

才ノ神峠の歴史を聞く
4.長谷(ながたに)棚田
才ノ神峠を下ると眼下に棚田が広がる。田植えを終えたばかりの美しい水田と点在する茅葺屋根は日本の原風景である。Bコース組と合流して、棚田オーナーの畠さんから棚田の水利などをお聞きする。この棚田には「ガマ」と呼ばれる特異な水利施設があり、このガマを利用して灌漑を行なっている。
山腹を流れる三草山の水脈に石組みを構築し、その上に盛土して水田をつくり、棚田を造成している。この石組みは横井戸式で、棚田の各所の石垣擁壁にその入口を見ることができる。三草山は石英閃緑岩で構成されており、その丸い形状の隙間を生かした灌漑といえる。その歴史は室町時代にさかのぼるようで、農業土木の文化遺産ともいえる。現在もその伝統を受け継いで、70軒の農家がある。ただ、一時は1200枚もあった棚田だが現在は500枚程度。途中、休耕の棚田も見受けられた。

日本の原風景が広がる 三草山と棚田(長谷集落より)

田植えの終えた棚田を歩く

ガマと呼ばれる横井戸

ガマを説明する棚田オーナー畠さん

甘くマイルドな三草山の湧水

長谷公民館で浄瑠璃の披露

西田橋
棚田を歩き、麓の長谷公民館へ下る。途中の農園で、三草山の湧水をペットボトルにつめる。甘くマイルドな香りがする。公民館では予定になかった能勢の伝統芸能、浄瑠璃の披露があった。近くの西田橋は江戸時代「西さんの橋」として親しまれた長谷産の堅質な石英閃緑岩で造られた石橋。石大工の技の面影が残る。
終わりに
能勢の自然と歴史を歩く。三草山と長谷棚田のご感想はいかがだったでしょうか。好天に恵まれ、久しぶりにいい汗をかいた一日だったと思います。懇切丁寧にガイドをいただいた川合さんはじめ能勢観光ガイドの会の皆さん、棚田オーナーの畠さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。

三草山を背景にガイドの皆様と
三草山滴る棚田潤して     さちこ
文/平山、俳句/秋山、写真・編集/平山
企画:平山 元哉

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